381系からの置き換え計画が発表されてから1年余り。 おおよそ1年後の2023年の年末も近づいた頃に、ようやく実車が登場しました。 2024年1月現在ではまだ試運転の段階ですが、間もなく本格的に置換えとなります。 と言うことで今年はこれで決まりです。 ■年賀状2024年 <新型「やくも」 273系> 今年の車両はJR西日本の新車、273系「やくも」です。 他に有力な対抗馬がいればともかく、今年はほぼこれ一択で迷いがありませんでした。 最近では珍しいことです。 さて対象は決まったが、どんな絵柄にするか。 これは迷います。 岡山県南に住む者にとっては、伯備線と言えばやはり高梁川の風景。 しかし他にも絵になりそうな景色は豊富で、大山に宍道湖に水田風景。 そうそう、「布原」という手もあるな。 いろいろ迷ったのですが、やはり高梁川を外したくなくて、こんな風景になりました。 決して悪くはないんですが、当初イメージとちょっと違ってしまった点が2つ。 その1 鉄橋が高すぎた。 その2 橋脚下部を川面に沈めすぎた結果、向こうからこっちに渡って来る感じになってしまった。 イメージと違う理由は、最後の写真の説明で。 「川」があれば鉄橋はつきもの。そうなると川面と後ろの山、空という組み合わせでイメージは決まりです。 後は列車の角度ですが、車両の特徴を出すには出来るだけサイドからの眺めが良さそうです。 しかしながら、真横にして川面まで入れると後ろの山を高くせざるを得ず、空が恐ろしくせまくなってしまう。 空を入れるとなると当然俯瞰はなし。 と言うことで、ちょっと斜めに向けて下から見上げるイメージです。 割合簡単に、鉛筆でササッとラフ画は描けました。 問題は車両と鉄橋のバランスです。 4両編成をすべて入れるとなると、どうしても車両の大きさ特に高さが低くなってしまいます。 模型のNゲージどころの騒ぎじゃありません。 何しろ幅100mmのハガキの中に収めなくちゃならない。 省略するところは徹底的に省力したいのですが、架線と電柱はまるまる省略するにしても、パンタグラフにクーラーまで省略すると車両のイメージが変わってしまうのでこれは外せない。 そして斜めからの視点となると、4両の長さのバランスも考えなきゃならないし、車両も後方に消点を定めて高さを変えなきゃならない。 イメージは出来上がったものの、色の寸法割をどうするかは意外と苦戦でした。 ラフ画を元に、ペン入れします。 版画にするため、トレーシングペーパーに転写します。 境界線のみで無駄な線がすべて除かれているため、絵と言うよりはマークのようなイメージです。 作業的にはペンで下絵をなぞるだけです。 上のトレーシングペーパーを元に、更に別のトレーシングペーパーに、今度は鉛筆で上からトレースします。 これを裏返しにして版木とゴム板に転写すれば、あとは彫刻刀作業です。 一応多色の色版画ですから、一度に全部の線を転写するのでなく、色ごとに境界線を転写する、という作業です。 「転写」と書くと何か凄そうですが、裏返しにしたトレーシングペーパーを版木に重ねて、裏(上)から爪の先で鉛筆の線の部分をコリコリとこするだけです。 車両の部分が薄くなっているのは、鉛筆で書いた線が版木側に移ったためです。 版画と言うよりは、スタンプづくりみたいな感じです。 ところで、風景のイメージはこうやって決めた的なことを最初に書きましたが、実はモデルのイメージは頭の中にありました。 こちらの写真です。 かつて撮影の名所だった、井倉〜石蟹間の「足見鉄橋」です。 綺麗なカーブを描いているのですが、「川を渡らない鉄橋」として有名でもありました。 井倉〜石蟹間の伯備線は、昔は高梁川の流れに忠実に沿って、急カーブを描きながら本当にアルファベットのS字そっくりに曲がって走る、速度の上がらない区間でした。 そして、急な山の斜面のために平地が確保できないこの部分には、川岸に沿う形で鉄橋が架けられました。 しかしながら、まだ電化される前の1978年秋に、S字を真っ直ぐ直線のトンネルと橋梁で貫く複線の新線が開業し、前後区間と合わせてこの鉄橋も廃止されました。 ですから、ここは現在の381系も走ったことはなく、「やくも」が走ったのは気動車のキハ181系時代。 そもそも電車の273系との組み合わせはあり得ないことではありますが。 そこは絵の世界ですから、こんなイメージ、と言うことでお判りいただければ。 ところで余談ですが、この書籍の写真。 実は大きな誤りがあります。 なぜかわかりませんが、写真が「裏焼き」つまり左右反転しているのです。 この足見鉄橋では、橋梁の上流下流どちらから撮影しても、こんな感じの似たような風景でしたので、編集時に間違えたのでしょうか。 それとも何かデザイン的な意図があって? 真偽のほどはわかりません。
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